[インタビュー企画第二弾] 赤坂エクセルホテル東急 村瀬氏
記事作成:2003/10/08
赤坂エクセルホテル東急
マーケティング チーフ 村瀬 雅彦氏
ホテルでの高速インターネット接続サービスが進んでいる。一部の客室から、持ち込みパソコンでインターネットアクセスできるようにしていたり、ロビーラウンジやレストランなどで無線LANサービスを提供していたり・・・。
中でも非常に熱心な取り組みをしているのが、赤坂エクセルホテル東急。宿泊したことがないという方でも、首都圏に在住&在勤の人であれば、一度は見たことがあるだろう。赤坂見附駅を降りて地上にあがると、交差点の向こう側に大きく横たわっているホテルだ。
まずはサイトを見てみよう。
赤坂エクセルホテル東急
インターネットサービス案内ページ
上記の専用の案内ページには、ホテル内でインターネットを利用したい人のための情報が詳しく掲載されている。それによると、92室(約6分の1)に最大15MBの高速回線が設置されている他、フロントと同じ3階にある「赤坂スクエアダイニング」のサロンコーナーとテラスコーナー、そしてロビーでは、無線LANサービスが利用できる。無線LANサービスは、Yahoo!BBモバイルの他、NTTドコモのMzone、そしてフリースポットとバリエーションもある。
今回は、その赤坂エクセルホテル東急でマーケティングをご担当されている村瀬氏に、高速インターネットサービスへの取り組みや、無線LANサービスを導入したきっかけなどについて伺ってきた。(インタビュー日:2003年9月26日)
「パソコン」「インターネット」を切り口としたサービスを早い段階で提供
赤坂エクセルホテル東急のオリジナルWEBサイトは私が担当しています。最初は、ほんの数ページのサイトだったのですが、お客様から問い合わせやご要望を受けると、その日のうちにページを新設してそこに情報を掲載して、メールをくださったお客様にもその報告をする・・・ということを繰り返していました。その頃メールのやりとりをさせてもらった方は、今でもいろいろ情報をくださったりしますね。
少し昔の話になってしまいますが、Windows95が発売された頃、秋葉原で長蛇の列を見かけたのです。話を聞いてみると、2日間缶詰でパソコンを教わるセミナーだとか。並んでいるのはほとんど中年男性で、「ああ、こういう時代になるんだなあ」と思いました。それで、ホテルでもセミナー込の宿泊プランを作って販売しました。通いで2日間でも5万、7万するところ、ホテルに宿泊して食事も全部ついて7万円ということで、好評でした。最初は宴会場で集合セミナーの形態をとっていましたが、そのうち、レベル格差も大きいことがわかって、一名でマンツーマンのレッスンを受けられるものを始めたのです。部屋にインストラクターが出向いて教えるというもので、ドクターの方などが多かったですね。
3F「赤坂スクエアダイニング」 入り口手前のカウンター |
ただ、ビジュアルに訴えてゆくブランディング重視のホームページというのだけでは、あまりアクセスが増えなかったりもするんですよね。インターネットの技術も日進月歩で進んでいますから、そういったものもどんどん取り込んでいかなくてはいけない。今度は、単に情報収集するためではなく、きちんと収益があがるホームページを作ろう、とオリジナルWEBサイトを立ち上げたのが2000年です。それ以降、ホームページを通じてお客様ともコミュニケーションをとりながら、宿泊プランなども打ち出してきています。
チャンネルをひとつでも多くお客様向けに割り当てるため社内用無線LANも停止
3F「赤坂スクエアダイニング」テラスコーナー 眺めもよい、とても落ち着いた雰囲気の場所 |
ただ、導入が遅れたのがマイナスだったかというと、そうでもなかったりします。この間に公衆無線LANサービスという需要がでてきましたし、またVPNに対応させることもできました。
回線はアイ・ピー・レボリューションの光通信で100メガの超高速です。今回の導入にあたって、どうしても実現したかったのがVPN対応です。そのためにシスコシステムズのネットワーク製品を導入しており、宴会場での高速インターネット利用の際にもVPNがご利用になれますので、企業のセミナーや会議では、固定IPアドレスでもって社内ネットワークに入ってゆくことができます。テレビ会議システムのような形で遠隔地の支社とも画像をつないで、一日会議を開いていたお客様もいらっしゃいました。ああ、これがブロードバンド時代ということなんだなあ、と私自身もその風景に驚きを感じましたね。
100円で利用できるコインインターネット用のパソコンは1Fと3Fの2箇所に設置 |
そういえば、100円で利用できるコインインターネットも、かなり利用されているんです。海外からビジネスで来られているお客様などは、メールチェックをしたりと結構活用くださっています。意外だったのは、今年の8月に利用が倍増したことです。8月というのは、ビジネスユースが落ちる時期なのですが、レジャー目的で利用している方々が、インターネットを見るために使っているんですね。当ホテルは東京ディズニーリゾートのグッドネイバーホテルになっていますので、8月は家族で東京ディズニーリゾートに遊びに行く方がたくさんお泊りになったのですが、多分、明日行くところをチェックしていたりするのでしょう。インターネットは、もう日常生活にあって当たり前のものになってきているんですね。
高速インターネット接続は追加料金一切なし
3F「赤坂スクエアダイニング」 サロンコーナー |
独自の回線の他に、Yahoo!BBモバイルなど複数を導入している理由ですか?
客室や宴会用には、100メガの光回線を入れていますが、それを3Fのダイニングやロビーでも開放してしまうことには抵抗感があったのです。100メガの高速なので、よほどの同時利用がなければスピードが落ちるとは思えないのですが、それでもお泊りいただいているお客様の利用時間と、ダイニングで利用する方々の時間帯は、やはり重なりますので。それで、専用線は宿泊客専用とし、いわゆるホットスポット的に利用していただく部分にはYahoo!BBモバイルやNTTドコモのMzoneを導入したのです。
Yahoo!BBモバイルさんは、導入時に実際に人を派遣してくれて、電波の強度を計測してくれるんですね。ここは、赤坂スクエアダイニングの入り口の天井裏にアクセスポイントを設置しているので、ダイニング内はもちろん、ロビーの端のほうに行っても、電波はしっかり届くのですが、ダイニング内でも、太い柱の陰になってしまうと、やはり電波は届きにくくなります。で、スタッフの方がそういう場所もきちんと見つけてくれて、「もしこの柱の向こう側でインターネットを使おうとしている方がいたら、席を少し変えるようアドバイスしたほうがいいですよ。」など、情報をくれるのです。電波強度を測るための専用プログラムが入ったPDAのようなものを持っていましたね。
「赤坂スクエアダイニング」は、 2Fからエスカレーターであがったすぐの場所 |
客室でも追加料金はとりません。これは私の考えなんですけど、ホテルというのは、高いお金を払って泊まっていただいていますけど、毎日暮らしている自宅と比べたら使い勝手はよくない。自宅のほうが何でも揃っていて絶対に便利なんです。その上で、自宅では当たり前に使えるインターネットを使うのに、さらに1000円追加料金を払わなくてはいけない、というのはどうかと。そもそも追加料金1000円としているところも多いですが、その金額が妥当かどうか。自宅のADSLなら最近では一ヶ月2400円くらいですよね。一日に直したら100円程度でしょう。このくらいをいただくくらいなら、サービスにしちゃったほうがよいと思います。
もちろん設備投資にも保守にもかなりコストはかかってはいますけれど、ホテルとして高速インターネット回線は、あって当たり前の設備になりつつあります。海外からの方などは皆さんそうですし、法人向けの営業でも、高速回線の有無は必ず聞かれるようになりました。
無線LANのウェイトはどんどん大きくなってくる
2Fテラススペースにはベンチもあり、メールチェックに最適 (ホットスポットではないですが) |
たまたま打ち合わせのためにこの場所を使っていただいた時に「ああ、ここって無線LANが使えるんだ」と知っていただき、また次の機会にも利用していただく・・・というような広がり方でいいのかなと思っています。
無線LANは、今後、どんどんウェイトが大きくなってくると思っています。私自身は今年、ソニーのバイオUを購入しました。とても小さなモバイル専用のノートです。どこにでも持っていけるし、デジタルブックをダウンロードして、本のように左右に開いて読むこともできます。手帳を持ち歩いていた人も、こういったノートパソコンやPDAなどのモバイル端末を持つようになって、プラスアルファで様々なことができるようになってゆくのかな、と思いますね。
ホテルの話にとどまらず
訪問者にとって使いやすいサイト構成の考え方や
喫茶店にいたるまでいろいろなお話を伺うことができました。
新しいモノ・技術・サービスに
意欲的&アグレッシブに取組んでいく姿勢を強く感じました。
お話させていただき、勉強になりました。
ありがとうございます。
赤坂エクセルホテル東急サイトはこちら
↑宿泊プランがいろいろあって面白い